ザブトン海峡・航海記

柳桜忍ぶ会

2015年5月29日

ただいま熱海五郎一座のお稽古中で、毎日仕事場と稽古場の往復です。
そんな中、桂小南治兄さんを中心にした呼び掛けで「柳桜忍ぶ会」がありました。
昨年亡くなった兄弟子の柳桜兄さんは、柳昇一門のすぐ上の先輩で、前座修業のイロハを教えてくれた人です。
冬、肌襦袢を師匠に掛ける時も、そっとストーブにかざして暖めてから掛けるほど気づかいの出来る兄弟子は、当然前座の仕事も沢山あって、お金の無い僕は、寄席の帰りによく酒を飲ませてもらっていました。
女性にも優しかったから、いつもモテてたなぁ。
二つ目に昇進した柳桜兄さんは、すぐにNHKの新人落語コンクールの決勝にも選ばれて、将来を嘱望された落語家だが、難病のヒュルガー病で身体を壊してしまい、膝から下を手術で無くしたが、義足で高座に上り続けて、なんとも言えない軽い高座で、笑いを取っていた。
僕が真打になった時も、僕が柳桜兄さんを追い越す形になってしまい、心の中では絶対に悔しかったはずなのに、真打昇進でテンパっている僕に、頑張れ!と励ましてくれる、人柄の良い、心の強い人でした。
身体が言うことを聞かない中での芸人生活は大変だし、悔しかったと思う。
柳桜兄さんからは「本膳」を稽古してもらったが、高座では一度もかけていない。
あの兄さんの何とも言えない、軽さと緩やかな本膳が、僕には出来ないからだ。
いつか、あんな本膳が出来るんだろうか…
あの世なんてものがあったとしたら、師匠の柳昇に「なんだ柳桜。早いじゃないか」なんて言われて笑っていることだろう…
僕は本当に周りの人達に恵まれている…
春風亭昇太